11日目の記録です。前回
11日目
11日目は家に帰る日です。
取捨選択
この日は朝に講話がありました。キールというインドのお粥に入ったレーズンが嫌でお粥ごと捨ててしまう子どもの話です。この合宿で教えられたことについて、納得できない部分があるならば、そこを除いて修行しなさい、全て捨ててしまわないようにという話です。やみくもに教えを信じて実践するのではなく、自分が納得した部分だけを生活に取り入れれなさいとのことです。
キール
朝食へ向かうと、件の「キール」が朝食に出ました。自分はお粥だと思ってたくさん器によそってしまいましたが、デザートとして食べるものでした。キールはカルダモンの香りのするミルク粥で、ミルクの優しい甘さがとてもおいしかったです。
撤収
朝食後、スマホと財布の返却がありました。もともとスマホは位置情報ゲームをするくらいにしか利用してませんでしたが、インターネットのドーパミンハックを考えると、今の穏やかな精神状態が崩れてしまいそうですぐに電源を入れる気にはなりませんでした。
朝食の後、瞑想用クッションのカバーや部屋のシーツをはがし、大急ぎで荷物をまとめた後はみんなでセンターの掃除をします。自分はシャワー棟を担当しました。きれいになっていくトイレやシャワーを見るのは心の汚れが落ちていく様を見るようで楽しかったです。
待機時間
バス停への送迎を待つ間、他の生徒の方とおしゃべりしました。参加者はみんな世俗から離れて10日間瞑想してみたいと思う人たちなので、初めて会った気がしないというか、みんな友達になりたい感じの人でした。
東京、埼玉、神奈川、群馬など、参加者は関東の人が多い印象でした。合宿に参加した理由は人ぞれぞれで、私のようにユヴァル・ノア・ハラリ氏の本を読んで知った人も何人かいました。他には人から勧められたという人が多かったです。「ぼーっとしたかった」という理由できた人もいました(その人は合宿が過酷でぼーっとできなかったそうです)。
古い生徒さんの話では、この合宿は参加するたびに体がキツくなるといいます。これは年々歳をとって体力がなくなるからではなく、深く瞑想ができるようになるので、それだけ反応も大きくなるとのことでした。来年もぜひ参加してみたいと思いました。
W杯
新しい生徒さんにサッカーW杯で日本がスペインとドイツに勝った(そしてコスタリカに負けた)ことを教えてもらいました。11日前、自分が出発する日にドイツと戦う予定でした。サッカーのことはほとんど知りませんでしたが、下馬評と正反対の結果に驚きました。
他の生徒さんはワールドカップが開かれてること自体を知らなかったり、ドイツやスペインが強豪であることを知りませんでした。ワールドカップ期間中に来ているので当然ですが、ワールドカップにすごく興味があるという人はいませんでした。
自分にはそれが新鮮でした。自分の周囲ではオリンピックやワールドカップがあればとりあえずそれが話題になったので、興味がなくても一応結果だけはみておくという感じでした。でもそれは自分の狭い範囲の慣習にすぎないのだと思いました。
バス停
バスに乗る人はバス停まで荷物を軽トラで送ってもらいます。男女ともにタクシーの乗り合いをする人が多く、バスに乗る人は少数でした。バス停に送ってもらう直前、宿舎に傘を忘れたことに気づきました。10日ぶりにダッシュして足を使ったので、ものすごく息が切れました。
この10日間で体も心も軽くなったし、菜食だからか肌もツルツルになりました。来ている人はみんないい人で「帰りたくないな…」と思いました。
バスが来るまでに30分ほど時間があり、待ち時間に地元の人に話しかけられました。定期的に大荷物を持った集団がバスに乗ってくるがどういう集団なのかを聞かれました。最近は時勢から地元の人によからぬ集団とみられることがあるという話を古い生徒さんから聞いていたので、少し身構えましたが純粋に興味がある人のようでよかったです。
その人は放流するサケの稚魚をもらいに公民館まで来たそうです。他にも千葉の海で塩づくりをする計画や、月の満ち欠けによって塩の味が違う話など色々な話を聞けて、楽しくバス待ちの時間を過ごすことができました。
ヴィパッサナっ子
自宅までの帰りに、電車内に傘を忘れました。最初「やっちゃったな…」と思いましたが、「まあビニ傘だからいいか」と思いました。その直後に「傘を忘れたのは快速だから、特快との待ち合わせ駅で取り戻せるぞ」と思いつきました。結局無事に傘を回収できましたが、これは講話に聞いた「ヴィパッサナっ子」だと思いました。ヴィパッサナー瞑想を続ければ、悲観するでもなく、楽観するでもなく、現実的な対応ができるという話です。
味覚
家に帰ると、スーパーで買ったピザとポテチを食べました。凄まじい刺激と味の濃さに驚きました。10日間薄味の菜食だったので、ポテチのアミノ酸などのうま味調味料の刺激がはっきりとわかりました。合宿から戻ってきて一番辛かったのが味覚でした。
化学調味料の使われていないバナナならば大丈夫だろうと思い、一番安いバナナを買って食べると、これも驚いたことに食べた瞬間から動悸がしました。後から知ったことですが、合宿中センターで出される食事の材料は有機栽培のものを中心に用意されていたようです。
帰ってきてしばらくは化学調味料の入った食品を避けていましたが、無化調の料理は手間がかかりすぎて不可能だと悟りました。有機栽培の食材も試してみようと思いましたが、値段に挫折しました。そんなわけで一週間くらいで元の食事に戻りました。
聴覚
味覚とともに敏感になって辛かったのが聴覚です。合宿後、目がよく見えることに驚く人が多いようですが、自分は耳が良くなって驚きました。いろんな音が3Dで聴こえるようになりました。これも一週間程度で元に戻りましたが、帰ってからは車のうるささに驚きました。道を通る人の声も、朝に鳴くカラスの声も耳元で聞いてるかのようにうるさく感じました。あまりにもうるさいのでしばらくは耳栓をつけて過ごしていました。
アルマイト加工
帰ってからあたりを散歩していると、不安感がなくワクワク感とやる気を感じました。大音量の広告や道ゆく人の罵声を聞いても心が穏やかでツルツルしている感じがありました。まるで泥できた心がアルマイト加工のアルミ素材になったような変化を感じました。
しかしその効果は長くは続かず、帰ってきた日の夜にはもう泥の心に戻っていました。ヴィパッサナー瞑想がうまくできた日などは半日くらいアルマイト加工の心になることがあり、この時間を伸ばしていくことが今後の目標です。
END
これでヴィパッサナー合宿の記録は終わりです。ほとんど無編集で必要以上に長くなってしまいました。それでも読んでくれてありがとうございました。今後いくつか補足のようなものと、その後の実践などの報告ができたらいいなと思っています。