ヴィパッサナー瞑想10日合宿の記録4

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2日目〜3日目の記録です。前回

2日目

湯たんぽのおかげか、この日は朝までよく眠れました。

イライラ

昨日に引き続き、瞑想では意識がそれまくってましたが、この日の瞑想はさらに集中できなくなっていました。原因の一つは頭の中に音楽が流れ続けることです。瞑想合宿に行く前にライブ中継を見た宝塚宙組のハイアンドローの劇中歌が頭にずっと流れてました。

もう一つの理由は駅前のパチンコの広告でした。自分の最寄り駅前の広告ビジョンから何度も流れるフレーズがいかに自分の記憶に刷り込まれていたのかを痛感しました。歌は自分の意思で聞いたものだから責任を引き受けますが、無理やり聞かされた広告に苦しめられるのは納得がいかない…ということを考えてさらにイライラがつのっていきました。

集中できないと周りの音もよく聞こえてしまいます。近隣の人の呼吸音がすごくうるさく感じられて、イライラで瞑想どころではなかったのを覚えてます。10日間の瞑想合宿では、2日目と6日目に逃げ出す人が多いという話でしたが、まさに2日目は心理的に大変で、このまま続けられるのか不安になりました。

この日の夜、アシスタント指導者に「頭に音楽がリピートして集中できない」件について相談しました。ATの回答は「無視する」ということでした。実際に音楽が流れる場所で瞑想してると考えて、意識して消そうとせずに呼吸にだけ意識を向けるように指示されました。

この回答は目から鱗でした。頭に浮かぶ考えも、音楽も、消そうとせず単に「無視する」。自分は普段の瞑想でも、頭に浮かぶ考えや音楽を消そうとして時間を使うことが多かったので、とても助かりました。独力で解決できない課題や疑問にすぐに答えてもらえるこの環境を用意してもらえてることに感謝しました。

3日目

この日の指示は上唇を底辺とする鼻全体を含む範囲の感覚に気づくことでした。感覚というのは皮膚上に起こるあらゆる感覚のことで、熱い、冷たい、かゆい、痛い、しびれる感じなど、個人個人で現れる感覚は違います。相変わらず意識はそれがちでしたが、昨日ATから助言を受けたことで意識がそれてもそのたびに落ち着いて感覚に意識を戻すことができました。

雨後のカエル(カエル事件1)

この日は再び雨が降りました。雨のあとにどこからともなく現れるカエルの大合唱でした。宿舎に戻ると、玄関に小さなカエルがいました。捕まえなくてはと思う間に、玄関のスノコの下に入ってしまいました。

瞑想を終えて再び宿舎に戻ると、自分の部屋から遠くの廊下に先程玄関にいたカエルが逆光に照らされて座っていました。これは「アレ」を使うときだと思いました。玄関にあった例のペットボトルと下敷きを使って他人の部屋の前で格闘すること数分、無事にカエルを外に逃すことができました。

無常

講話では、全てのものはアニッチャ(無常)であるという話がありました。ヴィパッサナー瞑想による感覚の観察を進めたブッダは、体の中でカラーパと呼ばれる素粒子がものすごい速さで生成し、消えていくことを知りました。川の水がいつも同じ水ではないように、ロウソクの火がいつも同じ火ではないように、全てのものは生まれては消え去り、生まれては消え去るプロセスの中にあるといいます。

この話を聞いて、宮沢賢治の「春と修羅」を思い出しました。

わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)

宮沢賢治 『春と修羅』

経験による知恵

講話によると、知恵には3つ種類があるそうです。

  1. スータマヤー・パンニャー(人から聞いて得た知恵)
  2. チンターマヤー・パンニャー(知性と分析にもとづく理解)
  3. バーバナーマヤー・パンニャー(自分の経験にもとづく知恵)

3番目の経験した知恵だけが本当の知恵で、その知恵を経験するために10日間の瞑想があります。

何日目かは忘れましたが、夜にトイレに行く途中、星空を見ていたらオリオン座の上の方に7個くらいの星がまとまって存在していることに気づきました。星に詳しくない上、スマホで検索もできないので確信はなかったのですが、これが「すばる」ではないかと思いました。プレアデス星団という別名、車メーカーの社名とロゴ、昔は視力検査の代わりに使われていたこと…など、自分はすばるに関する断片的な知識は持ってましたが、一度も肉眼ですばるを見たことがなかったのです。

コースが終わったあとに調べると、やはりこのとき見た星がすばるでした。

記録5へつづく